農業と学生がつながった半年間〜そしてその先へ〜

食べながら交わりながら

8月31日にキックオフミーティングを行ってから半年間、神戸の農家さんと学生がともに汗をかき、考えて、そして手を動かしてきた「はらぺこプロジェクト」も、最終報告回の日を迎えました。
お昼に集合して、まずは、カレーやピザを食べながらの交流タイム。規格外トマトを活用した冷凍カレーを開発し、販売までこぎつけたチームのカレーや、地域と農園を近づける機会としてピザパーティーイベントを行ったチームのピザが振る舞われました。ピザは自分たちで生地をのばしてトッピングするスタイルで、ユニークなピザがたくさんできていました。

半年間でできたこと、できなかったこと

交流タイムのあとは、各チームから学生の発表と農家さんによるメッセージの時間へ。
半年間という限られた時間の中で、大変だったことや嬉しかったこと、できたことやできなかったことが、様々なエピソードとともに語られました。

今回は東遊園地のURBAN PICNICを会場にして実施したのですが、扉を開放していたので、前を通り過ぎる地域の方々も立ち止まって発表に耳を傾けていました。

澤田農園チームは、農作業に加えて、規格外で出荷できないにんじんが大量に発生することを目の当たりにして、ショックを受けたといいます。そこで、「規格外でも味は変わらない」ということに着目して、大人にも子どもにも知ってもらおうということで規格外野菜を推すためのパンフレットを作成しました。パンフレットを手にした子どもたちからも「知らなかった〜」とか「美味しそう」という声が上がったとのことでした。
澤田さんからも「昨夏は酷暑だったので例年以上に規格外野菜が発生したが、学生の取り組みはユニークなものだった」とメッセージがありました。

トマトの栽培を集中的に行っていたゆめファームチームは、規格外トマトを使った食パンの企画やカレーの企画を提案し、JAの方々とともに商品化を目指してきました。結果的に、食パンはトマトの水分によってどうしても膨らみが甘くなるなど商品化には至りませんでしたが、カレーについてはすでに冷凍カレーの「学生が作ったトマバタチキンカレー」としてJAの直売所での販売が始まっているのです!
半年間ご一緒いただいたJAの皆さんからは「学生が提案したレシピをほぼそのまま使って、しかもこの短期間で商品化した事例は聞いたことがない。もっと意見を押しても良いくらいに感じた。」というお話や「作業工程を覚えるのも早く、本当に頼りになる存在となっていた。何かしらの形で今後もつながっていければ良いなと感じている。」というお話がありました。

年間400トンものキャベツを出荷するkobe cabbageチームは、猛暑の中での雑草抜きや2kgもあるキャベツの収穫を行った経験から「一番の収穫は筋力がアップしたことです」という笑いも交えながらの発表でした。このチームでは、メンバーそれぞれが特技を発揮し、農場がある場所をわかりやすくするための看板製作や休憩所の大掃除、そしてwebサイトの作成にもチャレンジしました。
農家の藤原さんからは「あまりに重労働で、半年経ったら誰もいなくなるんじゃないかと思ったけど、最後まで活動したことに驚いた。社会に出てもこの苦労を思い返せば、大抵のことは大したことじゃないと思えるはず。」という激励をいただきました。

伊川谷エリアで活動をしていた鶴田農園チームは、半年間を振り返る話の中で「これで一旦終わる」という寂しさから涙ぐむ場面もありました。農作業だけでなく、休憩時間には鶴田さんとともに音楽を奏でたり、人生の話をしたり、本当に貴重な時間を積み重ねてきたのです。
規格外のさつまいもを活用したドリンクの企画なども進めたものの失敗してしまったことも大きな糧となり、その後の活動のエネルギーに変えていっていました。各種イベントにも積極的に参加し、地域と農場をつなぐという鶴田さんのミッションをチーム全体で推進している様子も伺えました。
鶴田さんからは、「これで終わりではないし、ふらっと来れる場を継続していくし、そこに引き続き参画してもらえればこれほどありがたいことはない。」と、涙を堪えながらのお話がありました。

小池農園チームは、キャベツの収穫や草引きに加え、耕作放棄地を開拓してきた経験が語られました。特に耕作放棄地を整備した場所で、地域と農場をつなぐということを目的に実施したピザパーティーの様子にフォーカスした発表となりましたが、自分たちの力で40-50名の家族に喜んでもらえるイベントをやり遂げたことに自信を得た様子でした。もちろん評価、反省する部分はあったということでしたが、チャレンジしてみたからこそ出てくることであり、彼らのチャレンジに会場からも拍手が起こっていました。

その先へ向かうためのワークショップ

各チームからの発表の後は、テーマに分かれての対話の時間となりました。
今年度で終了となるプロジェクトをどのような形であれば継続できるのか、あるいはこのプロジェクトが自分たちに与えた影響は何だったのか、そして令和の農業はどうなっていくのかという3つのテーマが学生から挙げられました。
どのテーブルも熱を帯びた議論があり、半年間とは思えないほどの学びや気づきがあったことをあらためて感じるひとときとなりました。

自分の体を動かして農業に関わったからこそ「生産者と消費者の距離の遠さ」や「農業は国の根幹といえるほど重要だ」という発言も多く見られました。
はらぺこプロジェクトとしては一区切りとなりますが、リベルタ学舎としても学生とともに2025年度以降もできることを考え、実行に移していければと願っています。

最後になりましたが、半年にわたり学生を受け入れ、導いてくださった農家の皆様お一人おひとりに心より感謝をいたします。本当にありがとうございました!

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