「地域課題解決」が、中高生バーテンダーの「未成年 ホンネのBAR」になるまで

湯川カナ

湯川カナ

代表・事業プロデューサー

「大人はバーとかで本音とか話せてそうじゃないっすか。中高生にもそういう場があったらいいな、って

そう聞いたときには正直あまりピンと来なかったのだけど、当日の光景を見たら、いろいろすごく納得。
50歳の私の「常識」や「企画のテッパン成功メソッド」とか押しつけなくて、ほんとよかった。

<和気あいあいとは、このことだな!>

■ 次世代に「借金の肩代わり」させたらアカン

中高生が地域の課題を発見し、解決策を考えるプログラム。
はい、例のアレね。スーパーグローバルハイスクール(SGH)とかだと年に何回もいろんな授業でやらされるという噂の、そして自治体やメディアもちょくちょくSDGsの冠もつけてアワードやったりする、アレ。

社会変革に関わってきた私がすごくイヤだったのが、これまで「シャッター商店街を活性化させる」とか「農業の担い手不足を解決する」とか、要は大人がつくってきた課題を次世代に解決させる系が、わりと多かったこと。
そんな、親の借金の肩代わりをこどもにさせるみたいなこと、絶対やったらあかん。それはサクシュやでサクシュ。

ちゃんと中高生が中高生にとって切実な課題を発見することが、いちばん大事。なのだけど…

■ 「地域」って、遠くない?

中高生にまみれていると、そもそも学生にとって「地域」という言葉が、すごく遠いことを痛感する。
買い物はスーパーじゃなく通学路のコンビニ、届出は区役所じゃなく職員室。家と学校が、おおよそすべて。
辛うじて塾や習い事が登場するとしても、「(全国と比べての)地域」とか「(くらしの場として実感する)地域」とかの出番は、ない。

だからといって先に「地域しらべ~〇〇市の現状~」などインプットをしてしまうと、だいたい「少子高齢化」「若者の市外流出」「農業の担い手の高齢化」「伝統産業の後継者不足」「放置竹林」「空き家問題」など、”日本の地方社会課題・基本パック”にぶつかることになる。
これらは日本中で総力上げて取り組んでいてもまだ解決できない問題(あるいはITや移民制度の活用など高度なソリューションが必要な問題)だから、どれを選んでも絶望して当然。

なので「まぁ勉強上のお題だから」と自分事ではないAIマッチング頼りな解決策を出すか、あるいは「人さえ来ればいい」安易な行政マインドでアイドルフェスを企画したり若い力でTikTokでPRといった安易な広告代理店的解決策が出てくることになる。

でもこれらはあくまで勉強の対象としての「地域」であり、大人が想定する「(そこに暮らしがあり肌感がある)地域」ではない。

<ファシリテーターじゃなくてバーテンダーなのでドリンクもつくりまっす>


■ 「まちづくり」って、いま?

といって「まちづくり」という言葉も、遠い。学生は、地区のゴミ出しもしないし掃除当番もない。小学生なら学校の登校班や、地区のお祭りに家族や同級生と行ったり、まちと接点がなくもないけれど、それでもやっぱり学校と家の向こう側ではある。

しかも「つくる」って何よ。
多くのこどもにとって、「まち」はあるもので、「つくる」ものではない。マイクラじゃないんだから。それに、いちばん身近な家族が、まちづくりをしている様子もないし。いったい誰が、まちづくりしているの? つか「まちづくり」って、ほんと何事?

※いわんや「政策」とか

さらに、「政策」という言葉に至っては、「偉くて悪い人が東京の高そうな料理店でやっていること」という時代劇の悪代官シーンくらいに果てしなく遠いらしい。

そりゃそうか。だって法学部時代に弁護士目指してゴリゴリ司法試験受けていた私が、44歳で兵庫県広報官になった最初の月、県職員の人たちに「”県政”って何ですか? 意味わかんないっすよ」と言い続けたのだから。選挙権ない未成年で「政策っすね、ウィーッス」とはならないわ。


ちなみに「政策」の類語を調べたら「建前」が出てきた。もはや政策とは、「なんだかよくわからないけど、ともかく本音じゃない感だけはある」というものかも。うん、きびしーい!

<高2作成ポスター。振っているのはソフトドリンクのペットボトル>


■ “未成年 本音のBAR”へ

今回、リベルタ学舎で兵庫県阪神南県民センター事業「令和6年度中高生による地域課題チャレンジプロジェクト」を運営することになったのだけど、というわけで「地域の課題を解決する政策提言」じゃ響かないと思った。そこで、コンペで提案したとおり5人の中高生による実行委員会で企画内容&名称の再考からスタート。

委員会の初回、「私たちは、中高生が地域でやりたいことを実現する準備はする。でも、どうやったら、中高生が(地域で)やりたいことを引き出せるんだろう?」とメンバーに相談。
そのときに出てきたのが、冒頭の言葉と「未成年 ホンネのBAR」という企画だったのでした。

中高生にとってリアリティがあるのは、やっぱり「学校。だから、「学校で本当はやってみたいこと」を考えてみて、それが実はできるんだとわかることが、結果的に「自分事で地域変革に取り組む」に直結するんじゃないか…。

なるほどなぁぁ!

それで実現した、当日の様子。

当日司会進行をした高3の”ふうが”が、台本もないのに「今日いちばん伝えたいことは、全員一緒にするのが正しいみたいな風潮が学校にはあるなかで、自分を出すことを大事にしてほしいなって」と言ってくれた。

それがめちゃくちゃ嬉しかった。

うん、地域課題解決の前に、自分自身の課題を解決しようぜ。
そのために力を合わせる「みんな」がいるのが、「地域」だぜ!

 

■ 次世代が、大人を、未来を、信じられるように。うりゃ!

今日また実行委員会と話して、「大人のファシリテーターは、いなくていいっす」と言われたので、これからもまた出番がなさそう。

建前なし、本音だけの場をつくる。
企画は中高生実行委員会、私たちは全力でそれを実現させていく。
次世代をサクシュしないために。
次世代が、大人を、未来を、信じられるように。

リベルタ学舎の学生支援活動は、だいたいそんなかんじ、でっす。
うりゃ!

<初対面の隣の市の中学生、これからナカーマだ!>